学校法人ドイツ音楽アカデミー


ご挨拶

四季を通じて青い空がどこまでも高いドイツ・ミュンヘンよりご挨拶申し上げます。

 

森の中で、木の梢を走る風の音にシューベルトの旋律がフッと重なる瞬間、

あるいは丘の上で、足元に広がるいくつもの教会の鐘がいっせいに自分の旋律を響かせ、それが不思議に調和して天へと昇華するのを感じる瞬間、ゲーテにベートーヴェンにブラームスが歩いたこの土地で音楽に携わる幸せで心はいっぱいになります。

 

“上手に弾くのではなく、心に響く音楽を奏でる人に”という言葉と優しすぎる笑顔を残して、ある日突然永遠に旅立ったミュンヘン音大ピアノ科前主任のフランツ・マッシンガー教授。20世紀の天才ピアニスト、アルトゥーロ・ミケランジェリの愛弟子だった教授が奏でるモーツァルトとシューベルトはひたすら美しく、心がアルプスを映す湖のように透明になるのを感じました。

 

“モーツァルトを弾くということを木の描写に例えるならばね、幹と枝と葉っぱがありますっていうんじゃなくてね、太い幹から枝が伸び、その枝からはさらに細い小枝が伸び、その小枝には大小いろいろな葉っぱがついていて、その一枚一枚に太く細く葉脈が描かれている。そしてそのうちの一枚の葉っぱにてんとう虫が留まっていて、パッと羽を広げたら葉脈そっくりの模様が浮き出た ー ここまで描くのがね、モーツァルトを弾くっていうことだと思うんですよ…” 楽譜に書いてある一つ一つの音符をいとおしむように、教授は目の前の一人ひとりを、どんな人でも、本当に大切になさいました。

 

音楽の研究のために海を渡って25年。いくつもの山を乗り越えることができたのは、たくさんのドイツの人の深くて変わらない優しさがあったからでした。

 

ドイツの国で学んだのは音楽だけではありませんでした。音楽と人の真なるものを私に教えてくれたドイツとの出会い ー 数え切れない程の不思議過ぎる偶然は、ここへ辿り着くための必然だったと確信します。

 

幸せは分かち合ってこそ価値あるもの。長年のドイツでの多岐に渡る活動を通して広がった私の強力なネットワークが、多くの方のお役に立つのを幾度となく経験するうちに、Akademie der Musik Deutschlandが誕生しました。

 

本物を真摯に求める若い音楽家が羽ばたく支えとなることは、空から私に与えられた使命だと信じています。国境を越えて本当の音楽でつながる輪を広げる幸せ ― あなたとの出会いの日が訪れますことを心から祈りつつ。

 

小長久美

学校法人Akademie der Musik Deutschland理事・音楽学者

小長久美

Dr. Kumi Konaga


小長久美 Dr. Kumi Konaga

 

音楽学者・芸術文化学博士。1966年福岡県生まれ、1992年来ドイツ在住。

武蔵野音楽大学ピアノ科卒業、お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程(音楽学)修了。国際ロータリー財団奨学金を得てドイツ・ハイデルベルク大学博士課程(音楽学)入学、ルードヴィヒ・フィンシャー及び前田昭雄のもとで18世紀交響曲の資料並びに様式研究。2009年2月『J. B. ヴァンハルの交響曲 ― ソナタ形式の観点からの様式史的作品研究 ―』により大阪芸術大学から芸術文化学博士号(論文博士)授与。独日両国で講演、トークコンサート多数。学術研究と並行し、ドイツの国立芸術機関と協力して国際的な音楽・文化・教育プログラムの企画・推進を行う。日本音楽学会正会員。学校法人Akademie der Musik Deutschland理事。ドイツ公益法人Asia-Europe Academy of Music Förderkreis klassischer Musik e. V.理事。