Press


■ July 2017

■ July 21, 2016 Münchner Merkur

■ March 23, 2016 Hallo München

■ February 18, 2016 Münchner Merkur

■ September 07, 2015 Süddeutsche Zeitung

■ July 17/1, 2015 Münchner Merkur

■ August 17, 2012 Süddeutsche Zeitung

ブラームスに焦がれて 

若い日本人ピアニスト達とドイツのピアノ教授

 

普通ならば8月の暑い日曜日はスタインウェイ・ハウスの照明を落としたルビンシュタイン・ホールではなく、湖のほとりで過ごすものだろう。しかし7日間に渡る日本人ピアニストのためのマスターコースの巨大修了コンサートでは、22名の参加者の情熱と真剣さが会場を満たし、そのとりこになった人々は実に4時間超に渡ってひたすら客席に座り続けた。そして出演者達がミュンヘンのピアノ教授ミヒャエル・シェーファーとトーマス・ベッケラーが指導するこのセミナーのためにわざわざ日本からやって来たことを知ると、この若き演奏家達への驚きと敬意の念が沸き起こるのであった。旅行と宿泊に必要な経済的負担を負ってでも参加するというのだから、このセミナーは特別で類まれなるものに違いない。

 

この若い日本人達がヨーロッパのクラッシックの音楽の伝統に如何に焦がれているかは、コンサートの最初の音から最後の音にまでに感じられた。バッハからサムエル・バーバーに至る演奏はどれもレベルが高く、いくつかの好演を選び出すことは難しい。それでも敢えて試みるならば、まず瀬尾菜月が大きな内的緊張と情熱でベートーヴェンの熱情ソナタ第1楽章の説得力のある演奏に成功したことを挙げよう。田中翔平はショパンの英雄ポロネーズ変ロ長調作品53の躍動的な解釈で、また小林聡子はリストの2つのコンサートエチュードの名技で印象的だった。活気あるクライマックスにはヨハネス・ブラームスの『新 愛の歌』作品65で達した。そこでは4名の歌手が三上絵里香と坂本久美のピアノに伴われて、ワルツに心躍る時間をもたらした。

 

オーガナイザーの音楽学博士小長久美に、4年前のセミナー創設時より参加を日本人ピアニストに限定している理由を尋ねると、その答えはシンプルだった。20年来ドイツに在住する小長は、ドイツ音楽の伝統への自身の情熱を自国の人々に直接伝えたいと考えていた。日本人の間でも高く評価されているこのセミナーは多くの参加者にとって、バッハやベートーヴェンの生まれた国で偉大な作曲家の足跡を辿り、そしてドイツ文化に浸る唯一の機会でもある。その機会を現実のものとするためにはしかし、彼女は莫大なオーガナイズ上の仕事をこなさなければならないばかりではなく、セミナー中には記録的なスピードで日本語とドイツ語の同時通訳も行わなければならないのだ。

 

こうしたドイツ滞在はピアニストにとって、言語により親しむのにも役立つ。例えば言語と歌の密接な関係を見せるバッハやモーツァルトの音楽は、演奏において雄弁さを要求する。こうした雄弁さや魂はアジア出身の音楽家の演奏に時折欠けるという決まり文句は、この修了コンサートでは全く真実ではないということが確証された。

 

トーマス・ベッケラー、ミヒャエル・シェーファー両教授にセミナーの経過について尋ねると、二人の意見は即座に一致した。若い日本人への指導は非常に楽しく、両氏は若い日本の音楽家達の大いなる真剣さと共感について感激した面持ちで語った。数十年来、アジアでクラシック音楽が体験しているルネサンスは第一に個性という精神的態度にその要因があると二人は言う。個性という精神的態度は、今や何百年にも渡る儒教思想の後に部分的に東洋にも到達している。そこでは音楽に関しても若い自意識の確立した個人は大衆から際立ち得、いやそれどころか大衆に対して自己を主張することが可能なのである。既にミュンヘンに定着したこのマスターコースは来年4月、ミュンヘン音大の大ホールで第6ラウンドを迎える。