小林壱成(東京藝術大学4年)
今回ミュンヘンのセミナーに参加したことは、文化、自然、生活や勉強する環境も含めて現地ならではの体験ができ、貴重な機会となりました。
今回、バッハの研究で著名なシュナイダー先生にバッハの無伴奏パルティータ2番シャコンヌ付きをみていただきました。
先生は最初から凄く踏み込んだレッスンをされ、他の無伴奏ソナタやパルティータとの比較、ドイツのallemandeという踊りについて、シャコンヌが2拍目から始まっている記譜についての解釈など本当に様々なことを教えてくださり、そして先生自ら弾いてくださいました。
先生の音は温かみがありながら、内に意志や気持ちが強く宿っており、言葉で説明できないようなところは弾いてくださることによって理解でき感動しました。
また、ドイツのご家庭に初めてホームステイをしました。
お宅はとても広い庭と古い建築様式の大きな家で、内部にはたくさんの絵画や装飾品があり、ドイツの文化歴史を全身で感じるような印象的なものでした。
ホストファミリーのゲルビッツご夫妻はとてもクラシックがお好きで、毎朝今をときめく演奏家について話したり、ご夫妻の前でバッハを弾いた時には涙を流して感動してくださったり、僕より大きい(?)犬Luccaもいて、とても楽しい時間を過ごしました。
ドイツでの時間はゆったりとしています。夏のこの時期はとても日が長く、夜21:30くらいまで陽が落ちません。そのせいでしょうか、コンサートやサッカー観戦、カフェで過ごす時間をのんびりと楽しんだりと、いつもせかせかと急いでいる日本とは違う景色ばかりで新鮮でした!
実際のドイツのご家庭での生活を経験できたことは、忘れられないいちばんの思い出です。
そして、世界最高水準のオケと劇場を持つミュンヘンでのファイナルコンサートですが、耳の肥えた方々に聴いていただくということにもなります。
今回は偶然ソロリサイタルという形でしたが、驚いたことに満席で、シュナイダー先生の席も無くなってしまうほどでした。
ミュンヘンでは音楽が自然に生活の中にあることや、みなさんの深い理解と愛好心を感じました。僕の演奏を集中して聴いていながらも温かい雰囲気で見守ってくださり、終演後「感動した!」と口々に声をかけていただき、とても嬉しかったです。
ミュンヘンのお客様の反応で感じることは、彼らはどう完璧に弾くかより、どう聴かせてくれるのかということを楽しみに演奏会に来ておられるのだなということです。
日本だと技術大国であるせいか、音程、弓の技術等々をより主眼に教えられることもあれば、聴衆もそちらに注意が向きがちで聴いておられる節がありますが、ヨーロッパの方々は、それは音楽を伝えるためのあくまで1つのツールにすぎないとわかっているというのが、毎回ヨーロッパに来ると感心するところです。
今回のセミナーで、バッハや他の作曲家への新しいアプローチを会得したので、これらを活かしてもっともっと素敵な演奏家になれるよう、さらに精進していきたいと思います。そしてまた素晴らしいドイツで弾きたいと強く思いました。
貴重な機会を万端準備してくださり、いつもこと細かくサポートしてくださいました小長先生、ほかスタッフの皆様方に感謝お礼申し上げます。
生涯忘れないであろう体験を、ありがとうございました!