田中 真緒(桐朋学園大学音楽学部3年)

今回初めてこのセミナーに参加しました。
大変お恥ずかしながら初海外、初海外セミナー、そして初めてのホームステイ……と初めてのことづくしで出発前は不安ばかりでしたが、ミュンヘンでたくさんの経験をし、過すうちにミュンヘンの街と人が大好きになりました。
初めてミュンヘンに降り立った瞬間、空気(においのようなもの?)が全く違うのが感じられました。今年はドイツでも記録的な暖冬だったようですが、日本の冬とは寒さの種類も少し違っていたように思います。街に出るとドイツ語表記の看板、前にも後ろにも日本語でない言葉でおしゃべりする人々……見るもの全てが新鮮でした。
初日の夜はドイツ語過剰摂取のためか夢までドイツ語で見てしまい、よく寝付けませんでした。けれど寝不足と感じることはなく、ミュンヘンの空気感に興奮しきっていました。
 
今回私はミュンヘン郊外に住むWeiß夫妻のお家にホームステイしました。本当に親切で優しくて、ほぼ毎日最寄り駅まで迎えに来てくださったり、車で観光に連れて行ってくださったり、おいしいドイツ料理を作ってくださったり……と感謝してもしきれないほど良くして頂きました。
ホストファミリーとの会話は勿論ドイツ語です!日本で半年ドイツ語学校に通っただけの、まさに”付け焼刃ドイツ語”がどこまで通用するのか、と思っていましたが、案の定最初の数日は「なんかずっとリスニングしている気分だ~」と思うほど、集中していないと聞き取ったり話したり出来ませんでした。
私は頭で考えるより先に口が出てしまうタイプの人間で、ドイツ語でどう言えばいいのか考えず発言し、途中で詰まってしまうことも多かったのですが、Weißさん方が耳を傾けてくださり、簡単なドイツ語で助けてくださったおかげで、ドイツ語で話すことを怖れずに過すことができました。
以前なにかの本で読んだ、「その言語が話せるか話せないかよりも、話したいことがあるかないかの方が重要だ」という言葉を思い出します。
日数を重ねるにつれ次第にドイツ語にも慣れ、ラクに聞き取ったり話したり出来るようになり、日本でのことや自分自身のこと、逆にWeißさん方に質問したりと色々なことを話せてとても楽しかったです。
最終日のお別れの時は家でも、見送りに来て下さった電車でも大泣きしてしまいました。
 
セミナーでは私はベッケラー先生のレッスンを4回受講しました。ベッケラー先生のあたたかいお人柄のとおり、レッスンで弾いてみせてくださる音色は本当に美しく、レッスン中に何度も涙が出そうになりました。
今回私はショパンの大きな作品ふたつを中心に見ていただいたのですが、やりこんできた曲でもまた違った視点から考えられたり、曲を大きなひとつの流れとして捉え、曲のスケールを大きく演奏できるように指導していただきました。私は、長い時間弾いてきた曲は特に、守りに入ったような演奏をしてしまうことが多く、そんな自分がとても嫌で、このままではだめだ!と日本で悩み続けていました。それがベッケラー先生のレッスンを受け、一気に殻を破れた感じがしました。あの感覚は言葉では言い表せません。
また、私の弱点をどうしたら改善できるか、といったことにも重点を置いて、今後の指針も示して頂きました。
 
修了コンサートでは舞台に上がった瞬間、満員のお客様があたたかい笑顔と拍手で迎えてくださったのが分かりました。私のような外国人がクラシックの本場でクラシックを演奏するなんて、絶対厳しい目で見られる!と思い込んでいたので、すごく驚いたのと同時に、それに応えられるような演奏がしたい、ミュンヘンに来て感じたたくさんの思いを込めながら弾こうと強く思いました。
曲の冒頭から、真の意味で曲を聴くお客様の姿勢が全身に伝わってきました。曲が後半に差し掛かりクライマックスにかけての怒涛の勢いの部分では、お客様のテンションというか熱量が曲と共に上がってきているのが肌で分かりました。そういったことは今まで経験したことがない、不思議な感覚でした。より高い次元でピアノやお客様、ショパンと交信している……といった感じでしょうか。文章で書くと超怪しい人みたいですね(笑)
そして、そんなお客様方に終演後たくさんお褒めの言葉をかけて頂き、その上聴衆賞を受賞できたことは私にとってとても大きい出来事でした。
 
今回のセミナーでは素晴らしい先生方、ホストファミリー、受講生メンバーにも恵まれ、とても充実した、濃度の高い、夢のような1週間を過すことができました。また絶対ミュンヘンに戻ってきたい!という思いも高まっています。
最後になりましたが、小長様、朝島様、関係者のみなさま、本当にお世話になりました。たくさんの方に助けられ、励まされ、本当に感謝しています。ありがとうございました。